いびき治療ってどんな方法がある? 効果・種類・費用と保険適用まで徹底解説

「いびき治療って本当に効果あるの?」

そう思う方は多いでしょう。

実はいびきは、単なる癖ではなく、気道の狭まりや睡眠時無呼吸症候群のサインであることも少なくありません。放置すると、疲れが取れない・集中力が落ちるだけでなく、高血圧や心疾患のリスクが高まることもあります。

いびき治療には、マウスピース療法・CPAP(シーパップ)・レーザー手術など、症状に合わせた方法があり、中には保険適用で受けられる治療もあります。

今回の記事では、それぞれの効果・メリット・デメリット・費用をわかりやすく解説。「自分に合う治療法は?」という疑問に、医学的根拠に基づいて答えます。

目次

いびき治療ガイド:効果・種類・費用と保険適用まで徹底解説

いびき治療とは?

いびき治療とは、睡眠中の気道閉塞や狭窄を改善し、いびきの軽減・除去、そして場合によっては睡眠時無呼吸症候群(SAS)の改善を目指す医療介入の総称です。

単に“音を止める”のではなく、原因の解明 → 適切な治療法選択 → 継続管理というプロセスをたどります。

多くの耳鼻咽喉科・睡眠専門クリニックが、この流れで診療を行っています。例えば、久留米大学いびき外来では、まず形態診断(ファイバースコープ、X線撮影など)を行い、その後終夜睡眠ポリソグラフィ(PSG)検査でSASを評価したうえで治療方針を決定しています。

典型的な流れとしては、以下になります。

1. 問診・視診・鼻・喉の評価
鼻炎・副鼻腔疾患・扁桃肥大・軟口蓋肥厚など、構造的な要因を耳鼻科でチェックすることが多く、鼻腔観察や内視鏡を使うこともあります。
2.睡眠検査(簡易検査または精密検査)
自宅で簡易検査をすることが多く、1~2日の睡眠時に酸素飽和度・気流変動などを測定し、無呼吸・低呼吸の頻度(AHI = 無呼吸低呼吸指数)を把握します。必要に応じて入院下でのポリソムノグラフィー(PSG)検査を行い、より詳細なデータを得ます。
3.診断と重症度評価
検査結果(特にAHI)をもとに、「ただのいびき」なのか「軽度~重度のSASを併発しているか」を判定します。多くの医療機関は、この診断に応じて治療法を選定します。
4.治療開始・モニタリング
軽症であれば保存的治療(生活改善、鼻処置など)から始め、必要時にマウスピース療法、CPAP療法、あるいは外科的治療(レーザー・切除・骨格手術など)を組み合わせます。治療中は定期的に効果を評価し、装置や手術の調整を行います。

いびき治療の種類:①保存的治療

1. 生活習慣の改善

生活習慣の改善は、いびき治療の第一歩。原因を根本から見直し、自然にいびきを減らす基本のアプローチです。医療機関の受診も重要ですが、まずは生活習慣の改善という根本の改善が何より重要です。

⚙️内容
減量・体重管理
肥満は気道を圧迫しやすくなるため、体重を減らすことで空気の通りが改善する可能性があります。
禁酒・禁煙
アルコールは咽頭筋を弛緩させ、いびきを悪化させることがあるため制限が効果的。喫煙は気道炎症を引き起こしやすいため避けたい要因です。
睡眠姿勢改善
仰向けで寝ると舌や軟口蓋が後方に落ちやすく、気道をふさぎやすい。横向き寝にする、枕を工夫するなど。
鼻呼吸促進
鼻づまりを改善する(点鼻薬、アレルギー対策など)ことで口呼吸を減らし、いびきの原因を抑える。

💡効果・限界
・軽度~中等度のいびきには有効なケースがあります。
・特に構造的な狭窄(骨格異常・扁桃腺肥大など)がある場合は、生活改善だけでは限界があります。
・効果が現れるまで時間がかかることもあり、「少しは改善したが完全には消えない」というケースが多いです。

🏥保険適用
・治療というよりはセルフケアのため、自費扱い(保険適用外)が基本です。

2. 口腔内装置(マウスピース療法)

出典:大倉山駅前港北歯科クリニック

口腔内装置(マウスピース)は、下顎を前方へ少し出すような構造にして、睡眠中に下顎や舌が後方に落ちるのを防ぎ、気道を確保するという方式です。

咽頭部の気道閉塞を物理的に緩和することで、いびきや軽めの無呼吸症状を改善することを目指します。

⚙️適応対象
・軽度~中等度の睡眠時無呼吸、あるいはいびきが主な症状のケース。
・CPAPが使いにくい、または使いたくない患者への代替手段としても用いられます。

💡効果
・多くの症例で、いびき音の軽減・無呼吸・低呼吸の頻度低下が報告されています。
・ただし、重症例や構造的な狭窄が強い場合には効果が不十分という報告もあります。

🏥保険適用
・睡眠時無呼吸症候群と診断され、医師が必要と判断した場合には保険適用が可能とされているケースがあります。
・例えば、上下顎一体型マウスピースなら保険適用で1~2万円程度という記載もあります。
・ただし、「いびき」だけでは保険適用外で、紹介状や診断書が必要な場合があります。
・自費で作成する場合は、数万円~10万円以上になることもあります。

3. CPAP(持続陽圧呼吸療法)

出典:かなざわ内科クリニック

CPAP(Continuous Positive Airway Pressure:持続陽圧呼吸療法)は、マスクとチューブを通じてあらかじめ設定した空気圧を気道に送り、睡眠中の気道を「押し広げ続ける」ことで、無呼吸や低呼吸、いびきを防ぐ治療法です。

⚙️適応対象
・中等度~重度の睡眠時無呼吸症候群(SAS)が対象。
・特に、AHI(無呼吸低呼吸指数)が基準値以上のケースで推奨されることが多いです。

💡効果
・無呼吸回数・低呼吸回数を大幅に減少させ、酸素飽和度の低下を防ぎます。
・日中の眠気改善、QOL(生活の質)の向上、併存する高血圧・心血管リスク低減といった長期的効果も期待されます。

🏥保険適用
・CPAP療法は、1998年(平成10年)から健康保険適用となっており(条件付き)、3割負担で検査・治療が受けられるようになっています。
・保険適用の一般的な基準としては、「精密検査でAHI ≥ 20、または簡易検査でAHI ≥ 40」などが例として挙げられていますが、医療機関により基準は若干異なることがあります。
・保険適用時の自己負担額は、3割負担で月5,000円前後という例もあります。

いびき治療の種類:②手術的治療

1. レーザー治療(LAUP)

出典:いびきメディカルクリニック

内容

軟口蓋や口蓋垂(いわゆる「のどちんこ」周辺)をレーザー照射で縮小・硬化させ、振動しやすい軟組織を変性させることで、いびき発生部位の振動源を減らす手法です。レーザーを用いることで、比較的少ない侵襲で手術可能なケースもあります。

💡効果
・いびき音の軽減を目的とした研究では、LAUP実施後に「いびきの主観的改善」が70〜95%という報告もあります。
・ただし、無呼吸低呼吸指数(AHI)や酸素飽和度という客観指標に関する中〜長期データでは効果が持続しにくいという報告もあります。例えば、LAUP後3.9〜5.3年でいびきの再発傾向があるという研究もあります。

Reports on the efficacy of the procedure for snoring were promising, with a clinical success rate ranging from 70% to 95%. (いびきに対するレーザー治療手術の有効性についての報告は有望であり、臨床的な成功率はおよそ70%から95%の範囲に及んでいました。)
引用:Laser-Assisted Uvulopalatoplasty for SnoringMedium- to Long-term Subjective and Objective Analysis

Snoring symptoms reappeared about 3.9–5.3 years after surgical treatments, which seemed earlier than the average of 6.2 years in patients receiving CPAP and should be considered in patient-participatory decision-making processes. (いびきの症状は、手術治療を受けた患者では約3.9〜5.3年後に再発しており、CPAP療法を受けた患者の平均6.2年よりも早い傾向が見られました。この点は、患者が治療法を選択する際の意思決定プロセスにおいて考慮すべき重要な要素とされています。)
引用:Effectiveness of Treating Obstructive Sleep Apnea by Surgeries and Continuous Positive Airway Pressure: Evaluation Using Objective Sleep Parameters and Patient-Reported Outcomes

🏥保険適用
・日本では、主に「いびき(単独症状)」を対象としたLAUPは、原則として保険適用外(自由診療)とされているケースが多いです。
・費用目安として、自由診療で「おおよそ5〜15万円程度」というクリニック案内も見られます(ただし術式・回数・施設に依存)。

2. 軟口蓋形成術(UPPP:口蓋垂軟口蓋咽頭形成術)

出典:北東大阪耳鼻咽喉科 鼻・副鼻腔手術クリニック

余分な軟口蓋や口蓋垂・扁桃などを切除あるいは再配置して、上気道(咽頭部)の通り道を広げる手術です。気道が閉塞しやすいケース(特に中等度以上の閉塞性睡眠時無呼吸/重度のいびき)に対して構造的な改善を目的に行われます。

⚙️適応対象
・特に、保存的治療・装置療法で十分な改善が得られない、あるいは明らかな咽頭部構造異常(扁桃肥大・口蓋垂長・軟口蓋振動部位など)がある場合に検討されることが多いです。
・また、「中等度以上の閉塞性無呼吸症候群(OSA)」や「重度のいびき症状」があるケースが対象となることがあります。

💡効果
・手術によって気道が広がることで、無呼吸・低呼吸回数の低下、いびき音の軽減、睡眠中の酸素飽和度改善といった報告があります。

Six months after suspension palatoplasty, apnea-hyponea index significantly reduced from 39.8 to 15.1 (effect size = 1.6). None experienced postoperative bleeding and velopharyngeal insufficiency 1 month following surgery. Subjective snoring severity (visual analogue scale) and daytime sleepiness (the Epworth Sleepiness Scale) significantly improved (8.7 vs 2.0 and 10.2 vs 4.9, respectively). (6か月後のサスペンションパラトプラスティでは、無呼吸低呼吸指数は39.8から15.1へと有意に減少した(効果量=1.6)。術後1か月の時点で、出血や咽頭閉鎖不全を経験した患者はいなかった。主観的ないびきの重症度(視覚的アナログスケール)および日中の眠気(エプワース眠気尺度)は有意に改善した(それぞれ8.7対2.0、および10.2対4.9)。)
出典:Suspension Palatoplasty for Obstructive Sleep Apnea- A Preliminary Study

🏥保険適用
・「睡眠時無呼吸症候群が確定診断されている場合/適切な適応を満たしている場合」であれば、保険適用となるケースがあり得ます。
・費用目安として、保険適用時で「約3〜7万円程度(入院費別)」という例もありますが、実際には術式・入院期間・病院によって大きく異なります。
・手術が構造的に高度な場合や自由診療扱いの場合は自己負担額が飛躍的に上がる可能性があります。

治療の選び方と費用比較

これまでの内容をまとめると、以下のようになります。

スクロールできます
治療法効果保険適用自己負担目安
(3割負担)
特徴
生活習慣改善軽症に有効×自費副作用が少なく、安全に取り組める
口腔内装置
(マウスピース)
軽〜中等度に有効
(睡眠時無呼吸症候群診断時)
約1〜2万円非侵襲的で続けやすい
CPAP
(持続陽圧呼吸療法)
中〜重症に有効約5,000円/月最も確実な治療法
レーザー治療
(LAUPなど)
軽症〜中等度に有効×約5〜15万円日帰り可能、自由診療
UPPP手術
(軟口蓋形成術)
中等度〜重度に有効約3〜7万円根本的な構造改善が可能

症状の重症度なども加味して、適切な方法での受診が大切ね!

その通り!迷ったら、医療機関に受診して適切な治療を選択しましょう

まとめ

今回の記事では、いびき治療ってどんな方法があるのか? という疑問に対して、治療の種類・効果・費用・保険適用の有無までを詳しく解説しました。

いびきは単なる生活習慣の問題に見えて、睡眠時無呼吸症候群などの重大なサインであることも少なくありません。生活習慣の改善やマウスピース、CPAP、レーザー治療、手術など、症状や原因に合わせた方法を選ぶことが重要です。

何より大切なのは、自分に合った治療法を見極め、適切な医療機関で相談・治療を受けること

「最近いびきが気になる」「日中の眠気が強い」と感じたら、まずは専門の耳鼻咽喉科や睡眠外来に相談してみましょう。

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この記事を書いた人

コージー | 睡眠コンサルタント

社会人生活の傍らで続けていたスポーツ競技での故障や身体の不調を経験し、健康維持や病気の予防に関わる仕事を志す。
国内最大手企業→ヘルスケア業界へ転身し、医療機器開発やヘルスケアサービス開発等に従事。これまでに、国、自治体、医療機関等と連携し、様々な未病予防や予防医療に関する事業を推進、展開。
現在は睡眠関連の事業を立ち上げ、睡眠の悩みや身体の不調が気になり始めた方に向けて、「知る」「予防」「改善」につながる取り組みを推進中。

睡眠健康指導士上級
スリーププランナー
NESTAスリープサイエンススペシャリスト
健康マスター

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